PCで地デジ番組の録画 -結論-

PC用地デジチューナを使った録画および視聴に関して現段階で思ったことを記載します。
※以下は正規の方法(著作権保護機能をそのまま)での話です。

1.伝送方式の問題

世界のアナログTV放送はNTSC方式とPAL方式の2種類に分別できましたので、すべての方式に対応したチューナを開発するのはそれほどコストはかかりませんでしたが、デジタル放送の場合は、欧州方式(DVB)、アメリカ方式(ATSC)、日本方式(ISDB)、南米方式(ISDB-TB)、韓国方式(DBM)、中国方式(CDMB-T)など各国様々な方式が採用されています。
これによって海外製品の場合は日本向けでなければ利用できませんので、アナログ時代よりも選択可能なチューナ製品数は限られてきます。

また、日本の電波法などに関する法規、条例など電波に関する厳守事項が業界をまたいで複雑なため、海外メーカが容易に製品を開発し販売できない環境があります。

そのため、アナログ時代ほど日本国内で利用できるPC用チューナ製品は多くはありません。

2.著作権保護の問題

デジタル放送の場合は日本独自といえるのが著作権保護です。
著作権保護は本来、不正行為により著作権のあるコンテンツが市場へ流出するのを防ぐ役割です。
この著作権保護の特徴が暗号化です。
アナログ放送とデジタル放送の相違点もこの暗号化です。

アナログ録画データでも暗号化されているものはありましたが、それは一部の有料コンテンツのみでした。
しかし、デジタル録画番組の場合は一般放送番組の場合も暗号化されており、録画データも当然暗号化されて保存されます。

当然のことですが、暗号化されていると正しく復号できなければ再利用はできません。
※鍵でロックがかかった扉は、その鍵でロックをはずしてからでないと扉は開きませんよ。と同じことです。

録画データの場合、暗号化は録画デバイス機器がもつ鍵情報(デバイスキー)を使って行なわれますので、復号の際はそれと同じ鍵情報が必要となります。これにより、録画したデバイス機器でのみ再生できる仕組みを実現しています。

デバイス機器の基板にデバイスキーが書き込まれている場合は、修理などでその基盤を自体を交換しない限り鍵情報が変更になることはありませんが、PCのような汎用デバイスはデバイスキーの生成をソフトウェア的に行なうので構成(レイジストリーなど)が変わるとデバイスキーが変更されてしまう可能性があります。
暗号化のときに使用した鍵が無い状態では、すでに保存されている録画データを復号できず再生できません。
再生だけでなく、ムーブ/コピーなども一切できなくなりますので全く利用できず、データを消去したのと同等の状態になります。
データとしてファイルが存在するだけに悔しい思いをします。

以下は復号できなくなるダメな例の一部です。
・CPUの交換
・マザーボードの交換
・HDDの交換(※HDDはそのままで接続するSATAポート番号が変わるだけでもダメかも)
・OSクリーンインストール

利用環境を良くしようとした構成変更やハードウェア障害の修復のための構成変更だけでも、個人で利用するだけのコンテンツが利用できなくなってしまいます。

これはPCに限らず家電製品でも同じことで、機器の修理の際には保存しているデータの保障はありません。
※基板に鍵情報が書き込まれているケースはその基盤が交換されない限りは問題ないと思いますが、メーカの修理は基本的に原因究明はせずにとりあえず関連するパーツの交換で様子をみるといった対応をするので、修理によって基板が交換されてしまう可能性は高いです。

修理の前に録画データのバックアップをとろうとしてもどうすれば確実なのかは経験が必要ですし、ムーブに失敗するとバックアップがとれずに削除されてしまうケースもあります。また、修理が終わったあとにそれをもとの場所に戻せる保障はありません。

ムーブバック機能でメディアから戻せる機能があっても、移動するデータ量が多いと数日かかってしまい機器によってはその間は録画や再生など他の操作ができません。
 

3.イメージバックアップは不完全

デジタル録画データの場合、万が一に備えてイメージバックアップを取得していても、そのバックアップデータをリストアして使える保証はありません。
これは、イメージバックアップ=複製ともとれるので複製ができてしまっては製品としては販売できなくなります。
そのため、イメージバックアップからリストアしたデータを保証している製品はありません。

実際にリストア後のデータが再生できるかどうかは状況しだいで、1番と同じく鍵情報が変わるような変更をしていなければ問題ないはずです。
しかし、具体的にどこまで大丈夫なのかは正確にはわかりません。

問題は復号に使用する鍵情報が変わってしまうことなので、ブルーレイやDVDなどの外部メディアに所定の方法でムーブ/コピーするのが、万が一に備えたバックアップとして使えます。
しかし、メディアに記録したデータの完全性を保証しているわけではありません。

※最近はカセットHDD(大容量のリムーバブルメディア)がバックアップ用途に利用可能です。

たとえば、ハードウェア障害を想定したイメージバックアップは無駄になります。

4.単体販売されているDTCP-IP対応のMediaServerは存在しない

アナログ録画データに対応したDLNAのMediaServerはフリーのものが多く存在していました。
※Windows 7ではOSで標準装備しています。
デジタル録画データに対応したフリーのMediaServerは存在しません。
※Windows OSでも標準装備していません。

なぜなら、日本では著作権保護の影響でDTCP-IP対応でなければMediaServerのようなネットワークを経由するものは利用できないためです。
※DTCP-IPは一例であって通信経路を暗号化して不正に複製ができないような対策を施していなければなりません。
これは世界中で日本だけの制約で海外製のMediaServerがわざわざ日本国だけの仕様に対応したソフトウェアを開発する可能性はゼロですので、海外製のMediaServerは利用できません。

さらに、DTCP-IP機能がある=著作権のあるコンテンツを利用しているとなり、著作権管理団体が著作権所有者に代わり使用料を徴収するためにフリーソフトが存在できません。仮に存在していると違法性があります。

またMediaServer機能は、日本国内では製品の一部として販売されているのでDTCP-IP対応のMediaServerを単体で入手することができません。

このため、デジタル録画データに関してはフリーのMediaServerは存在しませんし、単体で販売されている製品もありません。
 

5.双方向ムーブ対応のMediaServerは希少

DTCP-IP対応のMediaServerであればムーブ/コピー可能な製品があります。
ムーブ機能はDTCP-IP1.2からサポートしている機能だと思いますが、このムーブについては送り側と受け側の役割があります。
※DTCP-IP1.2はムーブのみ可能なので、ムーブ/コピーはダビング10のコピー可能回数を受け継ぎ複製されるものではなく、あくまでダビング10のコピー可能回数の制限内でのムーブができるだけで、ムーブ先のデータは「コピー不可、ムーブ可能」の状態になります。コピー可能数のカウントが0になると送り側のデータは削除されますので、以下は「ムーブ」と表記します。

ほとんどのムーブ対応製品は送り側の役割のみです。
そのため、一旦、ムーブしてしまうと再ムーブして元の場所に戻すことができなくなるケースがほとんどです。

具体的な例でいうと、GV-MVP/XSWを搭載したPCにDiXiM MediaServer 3 for mAgicTVを導入し、mAgicTV Digitalで録画したデータを一時バックアップのためDTCP-IPムーブでハイビジョンレコーディングHDDのHVL-AVR(DiXiM MediaServer 3)に退避すると、HVL-AVR上のコンテンツはコピー不可ムーブ可能な状態になります。PCの作業が終わりPCのローカルにムーブして戻したくても、HVL-AVRの操作画面にはPCのMediaServerは表示されませんのでムーブができません。
これは、PC側のDiXiM MediaServerにはムーブの受け側の機能がないということをあらわしています。

このような状況でHVL-AVRにムーブしてしまうと、PCへ戻せずHVL-AVRにコンテンツが蓄積されていくことになります。
また、他のレコーダで録画したデータもPCのMediaServerにはムーブできませんので、PCでデジタル録画データの一元管理はできません。

HVL-AVRのようなレコーディングハードディスクやDTCP-IP対応のNAS製品に録画データがどんどんたまっていくことになりますが、容量不足になればUSB接続のHDDを接続すれば回避できます。しかし、おそらくUSB接続のHDDにあるコンテンツを直接ネットワーク配信することは不可です。
また、この機器が万が一故障した場合や修理で基盤を交換してしまった場合は録画データは利用できなくなりますので、事前にこれらの機器からムーブ可能なMediaServerへ、退避(ムーブ)する必要がありますが、DTCP-IPムーブの受け側の機能がある機器は少ないのが現状です。
※ブルーレイやDVDなどのメディアやカセットHDDは可能

受け側と送り側の機能がある製品は東芝製の最近のレコーダとIO-DATA製のHVL-AVRシリーズおよびNAS製品らしいです。
双方向でムーブするには両方の機器が対応していないといけないわけですので、上記製品で構成するしかありません。

PC用チューナに付属のMediaServerでは、自機で録画したデータを撮りダメし他の機器へストリーミング配信したり他のMediaServerで一元管理する用途だけなら満足できるレベルにあるかもしれませんが、PCを一元管理するための用途には不向きだと思います。

以上により、デジタル録画データの完全なMediaServerとしてPCは不向きであると判断しました。

 

まとめ

不正コピーを防止するための機能が影響して個人利用に限定した環境での録画データの永続性が失われています。
これは録画データが暗号化されるときに使われる鍵情報の生成にすべての問題があると思います。(特にPCの場合)
ICカードなどで個別の鍵情報を生成するようにすれば、ハードウェアなどデバイス機器の変更にも対応できるように思うのですが・・・。

少し前ならBCASカードを代用すればいいのでは?と安易な発想がありましたが、現状ではBCASカードが必要でないケースもあるようなのでダメになりました。BCASカード自体は視聴者指定受信のスクランブルの解除が主の目的であるので仕方がないでしょう。

結果、著作権保護機能を残したままの正規の方法では、この先も残念な思いをするのは予測できるわけで、これをもって正規の方法での録画環境を整備することを断念しました。

日本がこのような利便性の低い状態になったのは、規制をつくった人たちが悪いのではなく不正コピーを目的とした人たちが原因です。
なんでもそうですが、不正をする人がいなければわざわざ厳しい規制はつくらなくてもいいはずです。

不正コピーを目的とした人たちを恨みます。

【参考サイト】
DTCP-IPのお話